今日トレーダーに提供されている指標で一番人気のひとつが、移動平均収束拡散法と訳されるMACDです。このトレーディングガイドではトレードの決断を下す際にMACDが精度を大幅に改善できること、また、このパワフルなツールを他のテクニカル分析ツールと併用する方法などについて解説します。
今日トレーダーに提供されている指標で一番人気のひとつが、移動平均収束拡散法と訳されるMACDです。このトレーディングガイドではトレードの決断を下す際にMACDが精度を大幅に改善できること、また、このパワフルなツールを他のテクニカル分析ツールと併用する方法などについて解説します。
このガイドでは、ことトレードに関しては指標は少ない方が良い場合が多い理由と、トレードのスキルを磨くためにMACDのような指標を一つだけ活用する方法についても解説します。
指標の概要
トレーダーはテクニカル分析の補佐として指標を深く活用し、また指標の数値を計算するための変数が多数ありますが、ローソク足の始値、終値、高値、安値、また規模に基づいています。
これらの変数により、多くの指標が開発されてきましたが、大別して4つに分類でき、その目的は共通です。
- トレンド指標
- モメンタム指標
- ボラティリティ指標
- ボリューム
MACDはモメンタム指標カテゴリにリストされており、モメンタム・ダイバージェンスと呼ばれる状態を突き止めるために使用されますが、その内容は後程詳しく見ていきます。
MACD指標
例として、上に4時間スパンの金売買のMACDを表示しています。
MACDは3つの変数から成り立っています。
- 一つ目は標準的なMACD(上記チャートでは青で表示)であり、この線は12日指数平滑移動平均線(略してEMA)から26日EMAを引いた終値を基に計算されています。
- 二つ目の変数はチャート上オレンジで表示されていますが、シグナルラインと呼ばれており、9日EMAを基に計算、MACDラインの横にプロットされ、指標の展開をシグナルします。
- 3番目はMACDヒストグラムと呼ばれるもので、青のMACDラインとオレンジのシグナルラインとの違いを示し、ゼロラインの上下により緑と赤で示されています。(ご使用のソフトウェアでは違う色で表示されていることも考えられますが、このガイドではトレード・ビューのデフォルト色で例示します。)
では、MACDラインとシグナルラインが交叉した場合を見てみましょう(赤丸の部分)。MACDがシグナルラインよりも上の場合、MACDヒストグラムはセロラインよりも上か、各線がその逆の動きをした場合はその逆となります。
通常、トレーダーはシグナルラインを基にトレードへのエントリーを決めます。
これがMACDを構成する変数であり、初心者トレーダーからどの設定にすべきかの質問を受けることが多くありますが、通常デフォルト設定のまま活用し、カスタム設定などはしないままで問題なく機能することについても後程説明します。
モメンタム・ダイバージェンス
MACDを活用するに際し最も頻繁に使用されるのはモメンタム・ダイバージェンスと呼ばれる状態で、逆方向に向かう前にトレンドが反転することをトレーダーに警告します。
価格変動のモメンタムは値動きがどの方向に向かっているのかという力として定義することが可能です。トレンドの開始時は通常モメンタムの増加が見られますが、トレンドが成熟するに従い、反転する前に株価の値動きのモメンタムが枯渇するという傾向にあります。
上のチャートでは相場が上昇トレンドを見せており、MACDヒストグラムを活用すると価格上昇が加速(緑の矢印)、緑のヒストグラムも漸次増大する(ゼロラインよりも上)ことが分かります。続いて株価が是正が行われるポイントに到達(2回)しますが、この時ヒストグラムはモメンタムが縮小傾向に向かっている(ゼロラインの近くに)ことを示しています。
この現象はMACDヒストグラムに表示されたモメンタムが価格上昇が継続される中、枯渇してきていることを示しています。このことを価格とモメンタムがダイバージェンス状態にある、すなわち価格とモメンタムが逆方向に動いていることを示しています。
重要
モメンタム・ダイバージェンス指標には大きな問題があります。それはトレンドの強い相場において長期間ダイバージェンスを表示することがあり、そうなると強いトレンドの終わりがいつ頃なのかを判別しようとする際、あまり役に立たなくなってしまうことです。
したがって、MACDヒストグラムはそれ単体で使用すべきではなく、トレードにおいてより良い決断を下すためには他の分析方法と併用すべきと考えられます。システマティックなトレード戦略の一部として、MACDをどのように活用するのかを後程解説します。
Market Geometryについて
MACDの構造がどうなっているかの基本と、トレーダーがいかにこの指標を使ってモメンタム・ダイバージェンスを捉えるかが分かったところで、このガイドの戦略の部分に移る前にMarket Geometry(価格変動の形状)につていご紹介します。
Market Geometryとは何か?
Market Geometryとは価格変動の上下が対称になることが多いという基本的な考え方に基づいたもので、そうした対称を計測、あるいは定義する線引きツールがMarket Geometryです。
そのような線引きツールにアンドリューズ・ピッチフォークというものがあり、正しく使えば将来の値動きの予測や市場の動きの方向性、株価が支持線・抵抗線を辿るのかなどの判断する際、非常に役に立ちます。
コツ:ピッチフォークは修正傾向が終息しそうな領域を判断できることが多いため、修正時に適用すると特に有用です。
ピッチフォークについて
標準、Schiff、変形Schiffの3種類のピッチフォークがあります。ここで使用するのは標準とSchiffピッチフォークのみで、以下にそれぞれ解説します。
1.標準ピッチフォーク
ピッチフォークは通常三本の線からなり、それぞれ中心線と呼ばれています。上のチャートでは中央の線が中心線と呼ばれ、中心線の上部と下部にあるのがそれぞれ上部中心線と下部中心線です。
分析する時に、上部・下部中心線の上と下に更に線画し、これを警告線と呼びます(赤い線)。
ピッチフォークを線画する際、ユーザーは相場の動きの方向に合わせてピッチフォーク線の坂を決めるアンカーを選択します。このチャートでは、始点となるアンカーは最重要高値の位置、二番目のアンカーは下降トレンドの下に、最後のアンカーは下降トレンドの上部に設定します。
これらのアンカーポイントを使うことで、まず下部中心線が下降トレンドに到達し、その後トレンドの変動が起きるまでピッチフォークが各中心線の範囲での価格を定められるようになります。
コツ:標準ピッチフォークは、中心線の角度が非常に鋭角に付いているため、強いトレンドの相場を読む際に特に有効です。
2.標準ピッチフォーク
次に見ていくのはSchiffピッチフォークですが、標準ピッチフォークと違いSchiffピッチフォークは角度がもっとなだらかです。Schiffピッチフォークを線画する際もアンカーを選択しますが、中心線の始点が最初のアンカーではないことに注目してください。中央に50%程度の角度を付けたもので、最初のアンカーと二番目のアンカーの間に配置します。
下部中心線に株価が初めて到達したところに注目してください。方向が変わりましたが、この例では修正後の方向転換となっています。
コツ:Schiffピッチフォークは修正後に適用すると、修正値はトレンドよりも角度がなだらかなため特にうまく行くことが多いようです。
戦略の一部としてMACDヒストグラムを使用
ピッチフォークは一通り見ましたので、トレードで決断を下す際どれ程MACDが欠かせないものかを解説します。
戦略の概要
トレードする際に達成したいことは一つです。それはトレンドの間における修正の終わりを掴むこと。こんな表現を見聞きしたことがあるかもしれません。「トレンドこそ君の友達」。トレンドの間に修正が終わる方法が分かるとすれば、それはトレンドに沿ってトレードすることであり、修正が終わるのに逆らうことではありません。
目標とすべきはこれです。それを達成するためには複数のタイムフレーム分析、トレンド認識、Market Geometry、それともちろんMACDを活用します。
次に、取るべきステップについて解説します。これにより低リスクを突き止め、どの市場でも利益の出るトレード法が達成できるのです。
ステップ1:トレンド認識
トレンドに沿ってトレードしたいため、まずはトレンドの方向性を定め、いつトレンドが終わるのかも見極める必要があります。
上のチャートにおける基本的なトレンドラインは原油価格の4時間枠を示したもの(青い線)ですが、これはトレンドの方向性を示すものです。価格変動も高めの高値やy高めの安値など、上昇トレンドの相場に典型的な動きを見せています。
2019年4月23日の高値更新後に株価は下落し始め、トレンドラインやこれまでの市場傾向を割っていることが表示されます(赤い水平線)。この現象によりトレンド逆転の可能性が示唆され、下降トレンドへの心の準備が必要になります。
ステップ2:修正とMarket Geometry
次に取るべきステップは修正が起こりそうだという心構えです。最初の低めの安値と低めの高値が現れたところで、フィボナッチエクステンションツールをプロジェクトレベルで低い値に適用、来る修正への心構えとします。
価格が100%、フィボナッチエクステンションが1.618%レベルにまで達したことをご確認ください。支持線が現れ、どちらの状況でも高値修正が始まりました。
修正が近いことの確認が済んだら、Schiffピッチフォークの出番です。修正は通常ジグザグを描いて進行するため、ABCやその他の変数
修正内容にラベルを付ける際に具体的なスイングを気にするのでなく、ピッチフォークをガイドとして利用、修正が終わることを確認するまでの準備期間として捉えます。この場合は、修正は長続きせず、Schiffピッチフォークの中心線上部で完了しました。でラベル付けします。
ステップ3:トレード確認のためのMACDヒストグラムの利用
ステップ3はもっとも重要な部分です。というのも、トレードにエントリする条件が揃ったという確認が取れたうえで初めてトレードを開始したいからです。
上部中心線に株価が近づき始めたときに何が起こったのか見てみましょう。MACDヒストグラムが株価から乖離しし始めました。モメンタム・ダイバージェンスとなったわけです。
モメンタム・ダイバージェンスがMACDヒストグラムに現れたということで、原油で売りポジションに入ることが可能です。
最初のトレードのすぐ後に、別のトレード設定でフィボナッチエクステンションのレベルが1.618%に到達、その後上方修正が現れます。上部中心線に株価が到達したら、MACDヒストグラムにも微かなモメンタム・ダイバージェンスが現れるようになりました。
上のチャートでは修正は変わりありませんが、タイムフレームが30分に設定されれています。4時間チャートのモメンタム・ダイバージェンスには疑問が残りましたが、30分チャートでは上部中心線に株価が移動するにつれ、強いダイバージェンスが現れるようになりました。
コツ:30分などの短めのタイムフレームは比較的長時間のタイムフレームでは不確かなモメンタム・ダイバージェンスを確認することが可能です。
ステップ4:トレードへのエントリーと管理
MACDによりエントリーする時期に達したことが確認されたので、60.80をストップロスの赤い警告ラインとしてこのオーダーを59.30で売ることにしました。
ターゲットは通常2点設けるようにしていますが、最初のターゲットは下方における修正に、二つ目のターゲットは赤い警告ラインに設定しました。
コツ:修正が終わる時期を見定めるだけでなく、ピッチフォークはターゲットをどこに定めるのかを決めるためにも大変有用です。ピッチフォークが望ましいトレードの方向に傾いていることを確認するようにしてください。中心線の傾きがなだらかなため、ターゲットの設定にはSchiffピッチフォークを特によく使います。その方がターゲットへの到達が早いことが多いためです。
結論
インジケータはトレードの戦略を決めるのにとても役に立つツールですが、それ単体で、戦略としてではなくバックアップとしてのみ活用すると大惨事を招くことになりかねません。トレードする前にここで紹介したような戦略に沿って処理することはエントリーに先立ち心の準備ができるのみならず、MACDのような指標や分析テクニックを併用することでエントリーの制度を大幅に改善することが可能です。
モメンタム・ダイバージェンスがチャートに現れることもありますが、中心線など適切な箇所でそれが表示されれば、今起ころうとしているトレンドの変動を示すパワフルな指標となります。
こうした概念を自分でも試してみたい場合は、お好みの市場でピッチフォークを線画し、逆転が起きる前に時々モメンタム・ダイバージェンスが表示されることをMACDが表示します。
記事監修者プロフィール
渡辺 智
某メガバンクに11年勤めておりプライベートバンカーなどをしていました。現在は保険会社に勤務をしております。投資歴は、投資信託、外貨預金、FX、株式などです。
ライター歴は5年です。分かりやすさをモットーに執筆しております。
【保有資格】
・FP1級
・日商簿記1級
・銀行関連資格(証券外務員内管など)
・証券アナリスト
【経験業務】
・プライベートバンカー
・資産運用コンサルティング(投資信託、保険、債券、外貨預金など)
・融資関係(アパートローン、中小企業融資)
・カードローン、クレジットカード営業
・新サービス企画(投資信託電話約定サービス)